機会格差について語る会

機会格差について語る会

 

 

 

 

概要説明

~ 校プロ・パイセン部署企画!機会格差について語る会 ~

校外プログラム大全は、

 1. より多くの中高生やその保護者様に「校外」で活動できる機会があることを知ってもらう
 2. 自分の目的にあったプログラムに参加する機会を情報面でサポート
 3. 校外で、日常にはない学びと成長を得てほしい!

(本HPの活動理念から引用)

という理念と想いをもって活動しています。その前提には、機会格差や情報格差など、私達は平等でないからこそ生まれてしまう壁が幾つも存在している現実があります。しかし、そこで生じている実態を私達1人1人が必ずしも知っているわけではありません。そこで、今回は校プロで活動を始めて約1年になる10期のはるなが、そうした実態について当事者の声を聞き、記事として発信することで、普段知ることの出来ない平行線上に存在する現実を知り新しい視点やメジャーを得ることで物事を多面的に捉えられるようなきっかけを提供出来たらと思い、地方に在住している高校生に向けて機会格差について語る会を実施しました。

今回参加して下さった方は、私が昨年の9月~12月に居住していた株式会社エイチラボ(HLAB)が運営するSHIMOKITA COLLEGEで知り合った、未来の教室プログラムにモニター生として参加された地方在住の高校生のお二方です。

1つのテーマを軸に、自由に言葉を違えて語り合って頂きました。

是非、最後までご一読ください!

未来の教室プログラムとは…⁇

株式会社エイチラボ(HLAB)が採択された経済産業省「未来の教室」実証事業での高校生・大学生・社会人が共同生活を通じて学び合う「レジデンシャル・カレッジ」の首都圏以外での展開可能性を探る、サードプレイス実証実験。1都3県以外の地域に住む高校生を対象に実施された。

 

自己紹介

今回は、10期のパイセン部署チーフのはるなと、同期のカレンダー部署チーフのまおと一緒にファシリテーターを務めつつ、進行させて頂きたいと考えています。

まずは自己紹介をお願い致します。

 

三原 福井出身で、未来の教室プログラムにモニター生として参加させて頂いた、三原大和です。本日は、よろしくお願い致します。

小材 僕も同じく、未来の教室モニター生として株式会社エイチラボ(HLAB)が運営するSHIMOKITA COLLEGE に2週間滞在していました。出身は群馬で今は新潟の南魚沼市にあるめちゃくちゃ田舎にある高校に通っています。小材ジョン健太です。よろしくお願いします。

SHIMOKITA COLLEGE での体験について

三原 大きく2つ感じたことがあります。まず1つに、高校1年生、2年生、3年生と段階を踏むわけですけれど、その学年ごとの前提が地方と都会だと違うなと感じました。どういうところかというと、高校1年生の時点で、大学入試意識しているとか。自分の住んでいる地方だと考えられない事実で。普通、高校3年生になってからだよね、という感じなので。受験=高3、みたいな。もう1つは、地方だと海外行く、となると凄いとなると思うんですけど、都会だと行く人いて当然だよね、というスタンスを持っていることに驚いて。それは感覚の違いというか。地方の人が、東京行くとか、海外行く、とかいうと、すごくちやほやされるんですけど、それが、「すごい」の最上限なんだろうなと地方の子が感じて、それ以上目指すことが難しくなるというか。それが、最高到達地点になってしまって、限界を感じてしまうんですよね。でも、東京などの都会だとそれがなくて。

小材 めちゃくちゃ共感できるなぁ。自分は、不思議な立ち位置にいるんだけど、新潟の田舎にある高校にも関わらず、海外進学コース(以下、海外進、に略称)があったり。矛盾しているというわけではないけれど、すごく面白い学校で。さっき大和がいったように、すごくちやほやされるんですよね。英語が喋れるなんてすごい、とか、海外行くんだ、すごい、みたいに。でも、SHIMOKITA COLLEGE では英語が喋れる上に、その力を使って何かプロジェクトを行うとか。英語が話せることが前提にあることが常識化されている環境というか。SHIMOKITA COLLEGE の最終発表会のときに、僕は「情熱を取り戻した」という話をしたんですけど、やっぱりSHIMOKITA COLLEGE にいる人たちって何かしらゴールを持っているというか、目的を持っているというか。そしてそれに付随したやる気を持っている人たちばかりいて。それに自分自身も刺激を受けて。田舎だと集団として、どうしても方向性が固まってしまうというか。僕の所属している学校はすごく国公立を推進するベクトル上にあったりして。それなのに、海外進を設けている不思議な学校なんですけれども(笑)結局、海外進は現状キャパオーバーという感じがしていて。色々な先生たちに質問に行っても今忙しいから後にしてほしいと言われてなあなあに扱われることが多くて。だから、学校の雰囲気としても1つの方向性に向かっている、ということに対して、一方でSHIMOKITA COLLEGE は色々な方向に対して機会があったから、さっき言ったように情熱を取り戻したし、新しい刺激をもらえたから、すごく素晴らしい場所だな、と思いました。

機会格差について

地方でのイベント 開催・参加することの難しさ

三原 まず、色々なイベントを開催するにしても、開催する場所もないし、人が集まることがない、という事実を分かり切っているから、そもそも開催すらしないんだよね。だから、イベントって人が集まってこそ意味を成すし、効果も多大になるものだと思うので、どう考えても都会でイベントを開いたほうが効果的だということで、どうしても都会の方へそうしたイベントが流れてしまう現状はあると感じています。そういう意味で、地方で開催されるイベントって、本当に探してもなかなか見つからなくて。あと、やっぱりオンラインだと効果が薄いというか、オフラインでしか伝わらないその人の動きから読み取れる感情とか、そうした要素がないので人と対話している感じがしないんですよね。だから、オンラインイベントがあっても、そこまで魅力的に感じない、というのがあって。オンラインイベントが開催されていても、そこまで参加してみたいな、とは思えなくて。

それぞれが抱いている思い

三原 まず、前提条件として地方の子ってイベントの存在すら知らないんですよ。そうしたイベントを探す、探さない、以前に。探すっていうことを知らないから。

小材 そうなんだよね。なんか、受け身の状態になっているというか。

まお そもそも、課外活動というものを知らない、ということですか?

小材 いや、まず学校によると思うんだよね。

まお 進学校とかだと、そうした情報が手に入りやすいと思うんですけど、地方の進学校っていうと、そうした情報から遠いように感じていて。

三原 そうですね。県外の情報に興味が湧くまでのプロセスには必ず何かきっかけがあると思っていています。例えば、過去にそうしたプログラムに参加したことがあるとか。多くの場合、その最初のきっかけになるのって大体、先生だと思うんですよね。そこに生じる問題というのは、外部の情報を受け取ることなく地元で育ってきた人が大人になって先生をしているという事実で。だから、子供たちにもそうした機会を作る、という考えが根本になくて。地元で育ってきた人が先生になり、その先生に教育を受けた子供たちが地元の先生になる、という流れが出来てしまっていて。イベントを知るきっかけ、それ自体が生まれないという現状は、一種のスパイラルのようで大問題だと僕は感じています。

まお ジョンさん、どうですか?情報格差など感じていますか?

小材 それがとても不思議なところで。昔は進学校だったんですけど、今は自称進学校だという側面があって。だから、田舎にあるにも関わらず、海外進コースがあったりだとか。これからの時代に求められてくるような制度やコースは導入している面で先を行っている、と言えば先を行っていて。なので、そこまで情報格差を感じたことはないんですけど。今回の株式会社エイチラボ(HLAB)の地域在住高校生を対象とした、約2週間の SHIMOKITA COLLEGE 短期モニターステイを知ることが出来たのも、学校の先生からの勧めがあってのことだったし。でも、学校の設備はインターネットの回線状況が不安定になるなど、ボロボロな状態ではあって。パソコンなどものICTの側面では遅れている部分もあるなと感じています。しかし学校には外部のイベントやプログラムの情報が一定数、流れてくる状態ではあったので、大きな格差の壁を感じたことはなかったです。

地方で形成されている体系

三原 SHIMOKITA COLLEGE に居住している大学生と話していて大体纏まったことがあって。それを共有すると、都会で育った子が地方に移住するということはなかなかないということが発端となって、情報が地方のみでしか回っていない、という事実で。地方完結型、という風に自分は呼んでいるんですけど。地方完結型の問題点として、当たり前ですけど外からの情報が入ってこないんですね。もう1つは、外部から情報が入ってきたときにどのような反応をするかというと、その情報に対して不穏分子、という形でイレギュラーなものは排除していく風潮があって。一概には言えませんけど。なんで、その排除される動きが生じるかというと、やっぱり地方って人が少ないので、すぐに情報が回ってしまうんですよ。外部のイベントの情報は回らないのに、人の噂は流れるのがすごく速くて。だから、ちょっと変なことをすれば、すぐばれてしまう。それは、他の例でも同じことが言えます。例えば、夢を語ると自分の意志の否応なしに出回ってしまい、臭い人間だな、という認識を持たれてしまうので、みんな怖くて夢を語れなかったりして。それも問題で。何かやってみたい!こういうことをしてきました!という人が入ってきた瞬間に自分たちとは関係がないと判別して、すぐに排除してしまう傾向が出てきてしまっているんですよね。

あと、ジョンが言っていたけれど、地方の進学校と呼ばれる学校は、全国単位で見ると全然進学校ではない、ということがあって。県などでトップ層だと言われていても全国単位で見たら、そんなことないよね、みたいな。

小材 そうだね、それはめちゃくちゃ僕が感じていることで。別に、自分が通っている学校も地方の方でも高いわけではないんだけど、学校のプライド自体がすごく高くて。一定のプライドが出来てしまって、凝り固まっていて。だから、それに執着してしまうんだよね。僕が、株式会社エイチラボ(HLAB)でこうしたことをしてきました、と言ってもすごく困っていたというか。なんで、そんなことをするんだろう、みたいな。それもある意味、環境ってすごく影響しているのかな、と。学校の考え方としても生徒の質を高めよう、という感じではなくて、学校のプライドを重視しているというか。さっき、大和が言ったように、噂が広まりやすい、というのはすごく感じていて。やっぱり地元の人たちの繋がりは強固なもので、その中で、ある種のステレオタイプが確立してしまって、自分たちとは系統の異なるものを避けるスタンスというのはあるかな、と思っています。

機会格差是正のためには

三原 ここまで話してきたことが機会格差ないしは情報格差における現状からの問題点で、それに対してどうしていけばいいのか、という点について今からお話ししてきたいと思います。解決を担うツールとして僕が魅力に感じている代表例について言及すると、N校・S校は Slack (オンラインチャットツール) で25000人のコミュニティがあるのですが、そこで自分の好きなキーワードを打ち込めば、それに興味のある人が必ず見つかるようになっているんです。そのコミュニティ内に所属していると地元などの空間的な特徴などを気にする必要がないんですね。そうなると、都会・地方という地理的条件の以前に色々な情報を受け取ることが出来ますし、すごく万能なツールであると感じています。例えば、地方でのイベントの参加時に、そこで扱われている分野にプライドがないと参加が難しいと思うんです。イベントの渦中で話題がコアな部分に入っても気まずいだけだし。だけどイベントに参加するには、その分野に没頭できるくらい夢中になれる環境が必要なわけで。地方だと当たり前ですけど人が少ないので、同じ趣味を持っている人や共通の分野に興味関心を持つ人が見つかりにくいということもあるし、そうなると地方完結型のために、周りの大人の理解が得られず、周りにそうした人はいないよね、という形で全て断ち切られてしまったりしてしまう。なので、そうした問題点を払拭出来るSlackなどのオンラインチャットツールは都会・地方に関係なく築くことの出来る大規模なコミュニティの創造を可能にする点で、現実的ではないかもしれないですが、上記に述べた問題点を解決する手段として有能なツールであると感じています。自身でも、学校外にそうした大きなコミュニティは必要だなと感じています。言ってしまえば、オフラインの学校、オンラインの第二の学校(=サードプレイス)、みたいな。そうしたものを作っていくべきなんじゃないかなと感じています。

はるな ジョンさんは、サードプレイスという点で何かご意見はありますか?

小材 相変わらず、三原君が凄すぎていうことがないですね(笑)そうですね、やはり、大和の言っている通りで。これは、自分の曲がった考え方かもしれないんですけど、サードプレイスって逆に広げすぎてしまって当たり前になってしまうと特別感が淘汰されてしまう、というようなことは思っていたりして。というのも、株式会社エイチラボ(HLAB)が自分にとって特別な理由はある意味、学校が株式会社エイチラボ(HLAB)の引き立て役みたいな役割を担っていて、学校がそうしたコミュニティが広げられない、何も経験出来ない、学校の方向性とか先生たちも堅苦しい、といった側面があって、株式会社エイチラボ(HLAB)のサマースクールに行ってみたら、特別感を味わえたっていうか、みんな認めてくれて、新しいことにも挑戦出来たりとか、学校では出来なかった体験を経験出来たというか。結局、大和が言っていたことと同じで、別の言葉に置き換えているだけなんですけど、確かに、自分が一員として認識することが出来て、尚且つ、自分がそのコミュニティに貢献できるような、そういったコミュニティ作りが出来たら、それはとても素敵なことなんじゃないかと自分も思っています。サードプレイスだったりとか、株式会社エイチラボ(HLAB)だったりだとか、っていうのがもっと増えていけばいいんじゃないかなと。でも、出来すぎてしまって、それが当たり前になってしまうのはちょっと逆に良くないんじゃないかっていう気もしています。

はるな ありがとうございます。確かに、そういった面もありますよね。

小材 なんだろう、それが当たり前になって、みんなの質が上がる分にはいいと思うんですけど、実際そうなったときに、果たして本当にそうなるのか、懸念があるなと考えたりはしました。みんながみんな、その流れについていけるわけではないと思うので。だから、その特別感があるが故に、そうしたコミュニティへの所属を辞める、という決断をする人もいるだろうし。それが当たり前になってしまうと、みんなやっていて当たり前という風潮が生まれてしまって、そうしたことから遠ざかる人も一定数出てきてしまうような気がしていて。

はるな ある種、状態として学校と同じような空間が生まれてしまうということですよね。同調圧力じゃないですけど、そうしたベクトルよりかは、自分「らしく」ある場として機能するというか、選択できる場であってほしい、という感じですかね。

 

校外(=サードプレイス)とは?

小材 僕の場合は、一番素直になれる場かなと思ったりします。学校だと、どうしてもルールとか、その中でのコミュニティに縛られてしまうというか。高校って、レベルによって集まってくる人って同じような学力を持った人が多いと思うんですけど。自分の高校は真面目は真面目なのだけど、人間味がない人たちが多い傾向にあるというか。そういった人たちが多い環境だと、その仮面を自分も同じように被っていなかければいけないという感覚が自分の中にはすごくあって。高校3年間過ごして怖かったのは、本当の自分を見失ってしまうんじゃないか、というところで。そういう経験があったから、自分にとって校外というのは、一番自分らしくあることの出来る場で、尚且つ、自分に素直になれる場なのかなと思っています。

三原 それに対しては完全に同意で、自分のつけやすい仮面を被れるというか、その仮面を外したら、自分ではなくなる感覚というか。学校とか家って、選べないじゃないですか、そこまで。学校も入学してしまえば、基本的に3年間同じ場所だし。でも、校外ってずっとそこにいなければいけない訳ではないと思うんですよね。自分の合う場所が見つかるまでは、入って出てを繰り返して、本当に楽だなと思う場所に行けばいいだけなので。一回、自分に合う校外探しというのを始めたらもう人生幸せなんじゃないかと思えるくらい、校外というのは可能性のある場だと思っています。

編集後記

お二人の話を聞いていて、課外活動だけでなく社会全体としての地方格差が言語化されて少しずつ紐解かれていくのを実感しました。実際、課外活動の情報格差が生まれるのは、都心からの地理的な距離よりも地方特有のステレオタイプや常識など、日常生活レベルでの価値観の相違が根底にあることに正直驚いています。これらを変容させるのが難しいからこそ地方都会関係なく活動できるサードプレイスに需要があることに気づき、それらを通じて地方にも多様な学びの形が認知されていくことを願いつつ情報発信をしていきたいです。

2023/02/16  カレンダー部署・チーフ まお

三原さんと小材さんのお話を伺う中で、地方に帰属する格差の実態が明らかになってきました。これもまた、地方の今現在に広がる事実の1つです。私は、これまで色々な場所を転々としながら、その場における枠組みの中でするべきことが制限されたり、自身の在り方が変容していく過程を見てきました。課外活動に取り組んでいても様々な状況に置かれた方々との対話を通じて、その状況によって変動しながら立ち現れるトリガーにより得られるものが刻々と変化している現状を折々に感じています。どんな景色にも、そこに帰属する対象によって揺蕩いながら、自身のペルソナを定めていく只中に、サードプレイスという選択肢が増えてくることを願っています。

企画にご協力下さった、三原さん、小材さんに貴重なお話を頂いたこと、今一度感謝申し上げます。

2023/02/16  パイセン部署・チーフ はるな

 

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