今回はStanford e-Japan に引き続き早川さくらパイセンに書いて頂きました!
※これはITC2018の体験談です。ITCは毎年少しずつルールやプログラムが変更されているようですので、ご注意ください。
静岡県の加藤学園暁秀高校の2年の早川さくらです。
私は昨年、FedEx Express/JA International Trade Challenge(ITC)「英語でチャレンジ!ビジネスアイデアコンテスト」の日本代表チームのメンバーとしてシンガポールで開かれた国際大会に参加しました。
昨年私達が参加した時は大会に関する体験談も少なく苦労しました。
そこで修了生として、これから国内予選に出場される方々のために、ビジネスプランを当時どのように進めたか、どのようにアイデアを考えるとよいか、課題シートの書き方のコツなどをアドバイスできればと思います。
ITCについて
このコンテストでは、英語で、提示されるテーマに沿って商品/サービスを計画し、ターゲット国で販売するための市場参入戦略を競います。学校が違うメンバーでも良いので1チーム2名で参加します。
アジア太平洋地域より、日本、オーストラリア、中国、香港、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ベトナム、タイの計10ヶ国 が参加するグローバルなビジネスアイデアの大会です。
大会の流れ
説明会
書類選考
国内大会(書類選考通過約8チームが参加)
国際大会(国内予選上位3チーム6名が参加)
という順に進んできます。
2019年の大会の日程は
6月9日、説明会
6月24日、課題フォーム締切
7月15日、国内大会
8月18日~21日国際大会
となります。
説明会
6月初旬に、品川のFinance Parkで開かれます。私は去年初めてこの大会に参加したので行ってみました。
・パワーポイントを使ったプレゼンテーションのコツを教えてもらう。
・国際大会に出場した修了生からアドバイスを受ける。
・6人ぐらいのグループに分かれて、実際にビジネスプランを作って発表する。
・プランニングする商品/サービスのテーマとターゲット国が発表になる。
という内容ですが、勉強になるし楽しい説明会です。
この説明会でその年の課題が発表になりますのでここから大会がスタートになります。
もし行けなかったとしてもメールでその日のうちに課題フォームが送られてきますので大丈夫です。
書類選考
海外への市場参入戦略を計画する為のビジネスプランの書類をメールで提出します。課題が発表されてから提出期限までは2週間でした。
“Create a market entry strategy for an outdoor product. The market you are entering is Papua New Guinea”
「パプアニューギニアでのアウトドア商品の市場参入戦略を作りなさい。」
というものでした。
以下のような課題フォームが与えられて、ビジネスプランが質問に答えながら作れるようになっていました。
1. 商品
・あなたの商品は何ですか、なぜその商品を選んだのですか。
・顧客に見てもらいたいあなたの商品の良い点は。
・商品の悪い点があるとすれば何ですか。
・商品の競争相手はいますか。
・あなたの商品はどのような点で優れていますか。
・ターゲットとする市場の為にあなたの商品を変更する必要はありますか。
2. ターゲットとする市場
・パプアニューギニアのどこか特定のターゲットとする地域があれば述べなさい。国全体でも良いです。なぜですか。
・ターゲットは誰ですか、その理由は。
・ターゲットとする人の1年間の平均収入は。
・市場での理想とする顧客や商品を使う人について述べて下さい。
・他にターゲットとする市場についてどのような情報が重要ですか。
3. 値段
・アメリカドルで商品の値段。
・商品の競争相手との値段の比較の情報はありますか。
・値段の戦略を立てる上で必要なコストは。
4. 商品の販売方法
・どのような輸送法が国の中で使えますか(鉄道、船、高速道路)。
・どの輸送法を主に使いますかなぜですか。
・ターゲットとする地域まで商品を運んだら、どのように商品を販売しますか。
5. 宣伝方法
・主にどのように宣伝をしますか。
・その他に宣伝をする方法はありますか。
6. 目標
・市場参入戦略の短期的ゴールは。
・市場参入戦略の長期的ゴールは。
それでは、私達のチームが課題フォームを作るにあたって、工夫した点などを説明したいと思います。
商品
商品を何にするかはビジネスプランを作るうえで一番大切です。
2週間後の提出期限までに課題フォームの問いの全てに英語で答えなくてはならないため、焦ると思いますが、時間をかけてリサーチをしてアイデアをたくさん出して、納得のいく商品を選ぶことは何よりも大切だと思います。
アイデア出しに行き詰った際にはオズボーンのチェックリスト
①転用 ②応用 ③変更 ④拡大 ⑤縮小 ⑥代用 ⑦再配置 ⑧逆転 ⑨結合
というものがありますから、これについて勉強してみるとアイデアを出す助けになるかもしれません。
私達はパプアニューギニアの特産品は何かとか、パプアニューギニアの社会の課題は何か等について調べました。
そして、
・Bilumという女性達が手編みで作る伝統的なバッグを見つけ、パプアニューギニアの女性が現金収入を得る手段を作る。
・パプアニューギニアの伝統的な手編みの技術を海外に伝える。
ということをまず考えました。しかしそれだけでは商品の強みが少なく、課題の「アウトドア商品」にはなっていないため、
・パプアニューギニアのマラリアやデング熱などの蚊が媒介する病気の問題を解決する。
・私達日本人がパプアニューギニアの市場に参入するのだから日本の技術を持っていく。
ということを考えて、日本に蚊を予防するような繊維の技術はないか調べたところ、帝人のスコーロンという蚊よけの繊維素材の事を見つけました
そこで、パプアニューギニアの伝統的なBilumと日本の技術を使った蚊よけの繊維を結合し、バッグのBilumの編み方を転用したブランケットを作る事にし
「手編みのBilumの手法を使った防虫ブランケット」
に商品を決定しました。
商品名はBilumとMosquito(蚊)をあわせて、BiluMosにしました。
課題フォームの見栄えも大切ですから文章だけではなく商品の写真も撮って入れました。
ターゲットとする市場
ターゲットとする市場を決めるためには、まずパプアニューギニアの基本的情報を調べました。その結果、空路以外は、道路も鉄道も発達していないことから首都であるポートモレスビーを訪れるツーリストをターゲットとする市場とすることにしました。
課題フォームを書くにあたって、グラフを入れることにより見栄えも良くなりますし、説得力も強くなるので、パプアニューギニアについて調べたデータをエクセルでグラフにして入れました。
値段
商品の値段決めるのですが、数字的根拠(なぜその目標値なのか、価格の裏付け、利益やコスト等)を必ず盛り込んで説明できるようにしなくてはなりません。
競合する製品と比較してその値段で売れるのかどうか。
ビジネスを立ち上げるのに必要なコストについても計算して利益が出るように考えることも大切です。
目標
短期的ゴールと、長期的ゴールをチャートにして分かりやすくするように努めました。
私はビジネスの勉強をした事はなかったのですが、この課題フォームの回答を作っていく中で、どうやってビジネスプランを作るのかという勉強になりました。課題フォームを書いていると毎日少しずつアイデアが出てくるので提出期限ぎりぎりまで新しいアイデアをもとにして手直しを続けました。
私達の国内大会でのプレゼンテーションの骨格は課題フォームの段階でできていましたから、ここでしっかりとしたビジネスプランを作っておくことが大切だと思います。
国内大会
書類審査の結果が出てから12日後に国内大会が開かれました。スライドの提出期限までは9日間で、それまでにプレゼンテーションのスライドをマイクロソフトのパワーポイントで作成し、本番3日前までにメールで提出しました。
国内大会からはFedExの社員様がメンターとしてサポートしてくださいます。
書類審査発表の5日後までに、まず担当のメンターさんに、スライドを提出することになります。これはフィードバックを目的としていますので、スライドは未完成で大丈夫ですが、大会までの時間は限られていますので、出来るだけ早く完成に近いスライドを作ってメンターさんに相談することをお勧めします。
ここからは、メンターさんからのアドバイスをもらいながらプレゼンテーションを完成させることになります。
本番用のスライドの枚数の上限はありませんが、
私たちはメンターさんから
「持ち時間10分なので多くても5~6枚を目安」
との指示を頂いていたにもかかわらず最初40枚ほどのスライドを作ってしまい、最終的に25枚まで削りました。10枚くらいがオススメです。
動画・音声・過剰なアニメーションは使用不可との指示がありました。
私達はメンターさんに作ったアニメーションを確認して頂いたうえで
「アニメーションも効果的でいいと思います。」
との返答を頂きましたので、少しだけアニメーションを使いました。
メンターさんは
・パプアニューギニアのBilumですが編み方とその素材が特徴です。Bilum本来の肌触り(texture) も大事。パプアニューギニアへの旅行者にとって蚊の問題がどれほど深刻かを具体的に示せば、更に商品の使用価値を証明出来ます。
・Ecotourismを企画する旅行業者と共同企画してみてはどうですか。
・確たる証拠もなしに言葉を使わないで、Politically Correctな言葉を心掛けて下さい。
など、的確な指示を下さいました。
メンターさんから指摘されたところを直して提出すると、また新たな指摘が返ってきますので直して提出するという繰り返しが、大会事務局へスライド提出する期限ぎりぎりまで続きました。
メンターさんにはお忙しい中、本当にお世話になりました。
最後には
「パワーポイントの量以外は問題ありません。とっても良くできています。本番までもう少しです。自信をもってかんばりましょう。」
とおっしゃっていただき、アドバイスをもとに25枚にスライドを減らし大会事務局へスライド提出しました。
同時に国内大会での発表に向けてプレゼンテーションの練習も繰り返しました。
メンターさんは
・スクリーンに向かってしゃべらない(チラ見はOK)
・審査員にEye contactを!
・原稿を読まない。(メモなどを手に持つのはOKですが、なるべく読まない。英語の原稿朗読大会ではありません。)
・Tone of Voiceに気を付けて。はきはきと!
・スクリーンを指し示す場合は Open Palmを使ってください。(手のひらを広げて。)
など、プレゼンテーションのアドバイスもくださいましたので、
10分に収めるように、休みの日に集まって練習して、
学校でもクラスのみんなを前にプレゼンの練習をさせてもらいました。
スライド作成とプレゼンテーションの練習がひと段落したころに小道具類の作成を始めると良いと思います。特にスライドの提出が終わった後の2日間はプレゼンの練習以外やることがありませんので、私達はここでひと頑張りして小道具を制作しました。
そのことによってプレゼンテーションにリアリティーを持たせることが出来たとの評価を頂けました。
商品のイメージに似たブランケット、
帽子、アームカバー
ポスター
クラスメートに商品をイメージした布を羽織ってもらい、写真を撮り、文字を入れて、カラーで印刷をしました。
商品のタグ
印刷したロゴの裏に、手作りの商品であることを強調するため、織った人の名前を書くという設定にしました。
商品を入れる箱
印刷したロゴを家にあった箱に貼ってそれらしく作りました。
書類選考からスライドの提出まではずっとオンラインでの作業になります。
7月半ばの国内大会で初めて実際に審査員の前で発表します。発表の順番は会場についてからくじ引きで決められました。この大会では順番による有利不利はないと思います。今までの練習の成果を出すことが大切です。
プレゼンは二人で行いますが、話すのは一人だけです。
そこで、私たちは工夫して一人が話している時、もう一人が小道具のブランケット、アームカバー、帽子を着用してみたり二人とも出来るだけ常に参加するように心がけました。
そのことによって、審査員からチームワークが良かったと評価を頂くことが出来ました。
プレゼンが終わると審査員による質疑応答の時間があります。ビジネスプランごとによって、いろいろな質問が来るので、どう対処すればいいかアドバイスが難しいですが、頑張って乗り切ってください。
全てのチームのプレゼンが終わって、30分後に表彰式があります。ここで国際大会に出場する上位三チームが発表されます。私達のチームもその中に選ばれて国際大会に行くことが出来ました。
これで大会は終わりですが、審査員から自分達のチームのプレゼンテーションについてのフィードバックをもらうと次に活かすことが出来ると思います。国際大会に進出するチームはここでインタビューや国際大会についての説明も受けます。
まとめ
これで私のFedEx Express/JA International Trade Challenge(ITC)「英語でチャレンジ!ビジネスアイデアコンテスト」の国内大会での体験談とこれから参加する方々へのアドバイスは終わりです。私の経験が少しでも参考になったら嬉しいです。皆様のご健闘を祈っています。